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人力飛行機Möwe28 周回飛行世界記録挑戦について

 2014年10月19日(日)早朝,茨城県美浦村大山水防拠点.天候は雲一つ無い晴れ,風は北から北西にかけての微風. そのような状況の中,人力飛行機による周回飛行世界記録に挑戦するため,Möwe28が離陸しました.
 1週間前の10月12日(日)の挑戦時(風の状態が悪かったため挑戦はキャンセル)よりも好条件に恵まれましたが, 離陸時に機体を損傷するアクシデントが発生したため飛行中の機体の操縦が困難となってしまいました. そのような状況の中,パイロットが懸命に頑張り飛行しましたが,離陸地点から約500 m沖合で着水し残念ながら世界記録の樹立は達成できませんでした.

 このページでは,今回実施された人力飛行機Möwe28による周回飛行世界記録挑戦プロジェクトを,簡単にですが振り返ってみたいと思います.
(日本大学理工学部HPに掲載された周回飛行世界記録挑戦報告の記事はこちら








プロジェクトの経緯

 今回の世界記録挑戦プロジェクトは,日本大学理工学部のサークル,航空研究会(顧問:安部建一 専任講師)が2011年に製作した人力飛行機Möwe28から始まります.

 2011年に製作された人力飛行機のMöwe28は,その年の鳥人間コンテストへの出場を目指していました.しかし,書類選考の末落選し,残念ながら鳥人間コンテストへの出場ができませんでした.折しも前年の2010年10月,富山湾において人力飛行機による直線飛行世界記録への挑戦(Möwe 2006)が,飛行途中の突風による主翼破損により失敗に終わったこともあり,2012年4月から航空宇宙工学科安部(建)研究室の卒業研究としてMöwe28に携わったメンバーと共に計画の立案や記録挑戦場所の選定などを行い,新たな世界記録挑戦に向けたプロジェクトがスタートすることとなりました.

 これまでに航空研究会では数回に渡り飛行記録への挑戦を行い,2004年3月には11.8 kmの日本記録(Möwe20),翌年8月には49.17 kmの日本記録(Möwe21)を樹立しています.これらの飛行記録は,国際航空連盟(FAI)の規定に従った測定方法により,離陸地点から着陸(着水)地点までの直線飛行距離を用いて記録が登録されます.
 現在の世界記録は,1988年にマサチューセッツ工科大学とNASAが共同で樹立した115.11 km(Daedalus 88)であり,30年近く経った現在でもこの記録は破られていません.2010年に記録挑戦を行ったMöwe 2006は,この直線飛行距離の世界記録更新を目指したプロジェクトでした.

 しかし,日本国内で直線飛行距離の世界記録を目指す試みは大変な困難を伴い,記録挑戦に向けた新しいアイディアが必要とされました.そこで浮上したのが,閉区間コースにおける周回飛行距離の世界記録挑戦でした.
 閉区間コースにおける周回飛行とは,2か所以上の旋回点を設けた閉区間となる飛行コースを予め設定し,そのコースを1周以上周回した際の周回飛行距離により記録が登録されます.周回飛行距離の世界記録は,直線飛行距離を樹立したDaedalusのプロトタイプであるMichelob Light Eagleにより1987年に58.66 kmの記録が樹立されています.今回の世界記録挑戦プロジェクトは,この周回飛行距離記録のレギュレーションの一つである「三角形コース」を飛行する周回飛行距離の世界記録樹立を目指しました.

 最初の周回飛行距離への挑戦は,2012年11月に行われました.このときの挑戦では機体の準備中に突風が吹き,尾翼を破損し修理するも湖水温度が低下(0℃)するとの予報に,着水時のパイロット身体への影響を考慮し挑戦を断念,計画を次年度に引き継ぐこととなりました.
 2013年の挑戦では,4月に離陸場所の変更をし,挑戦への準備を整えましたが,7月にパイロットが練習中に怪我を負ったため,挑戦は再度延期することとなりました.
 三度目の挑戦となる2014年の挑戦では,4月に安部(建)研究室に配属された卒研生とともに,これまで以上に入念な準備を整え,万全な体制のもと記録挑戦の日を迎えました.



飛行計画概要

・実施場所(茨城県美浦村大山水防拠点)に臨時滑走路を敷設する.機体は実施場所で組み立てられ,臨時滑走路から離陸を行う.
・機体は湖上に設置したブイで定義した一周23 kmの三角形の周回コースを飛行する.
・飛行中は3隻の船舶で機体に併走し,パイロットの飛行を支援する.
・パイロット,船舶,地上本部は無線で情報を共有化し,危機管理する.
・記録実施には,(財)日本航空協会(JAA)公認の立会人が立会い,記録の認定を受ける.
・コースを一周すると,三角形コースの世界記録樹立となる.
・機体着水後,ただちに撤収し日本大学へ帰還する.






当日の記録

タイムテーブル

  1:00 集合、本部設営
  1:45 Briefing
        各班準備開始
  2:55 湖上準備作業開始
  3:15 機体組立開始
  4:05 パイロット到着
  4:43 湖上準備作業完了
  5:29 機体組立完了
  5:48 機体機能点検完了
  5:55 写真撮影
        機体最終整備作業開始
  6:20 支援船団出航
  6:27 支援船団待機場所到着、湖上気象観測開始
  6:40 パイロット乗り込み
  6:50 離陸準備完了
  6:57 交通封鎖完了
  6:59 一般船舶通過のため、一時中断
  7:00 離陸準備再開
        滑走、離陸、尾翼破損
  7:04 着水、挑戦失敗



















終わりに

 今回の周回飛行世界記録挑戦プロジェクトの終了にあたり,プロジェクトに携わった関係者の方々にコメントをいただきました.

・Möwe28 パイロット:博士前期課程2年生 丹下達道
安部研究室をはじめ,ご協力頂いた多くの皆様のお力によって記録飛行に挑戦する事ができました.本当にありがとうございます.2011年から始まった計画がこのような結果で終わったことは非常に悔しいです.これまで震災や鳥人間コンテスト落選,そして2度の記録飛行延期と様々な事がありました.それでも負けることなく,Möwe28が羽ばたくことに全力を尽くしてくれた仲間にも感謝しています.

・プロジェクトマネージャ,航空研究会顧問:安部建一 専任講師
2004年,2005年および2010年に人力飛行機の直線飛行のJAA公認の記録挑戦を行い,日本記録を2度更新することができた.このときは,機体,パイロット,離陸場所,気象条件等が揃った時に記録が生まれた.今回,2014年は周回飛行の記録挑戦であったが,人力飛行機は微風でも飛行に影響を及ぼすことが改めて分かった.4度の記録飛行を挑戦させていただいた本学に感謝する.

・サブマネージャ(運営統括):菊池崇将 助手
10月12日(日)の1回目の挑戦をキャンセルした後の2回目の挑戦だったので非常に悔しい.研究室の学生たちも体力的に厳しい中,寝食を削って頑張っていた.交通整理などの裏方に徹してくれた学生たちにも感謝している.プロジェクトの失敗の責任は,マネージャである我々教員にある.どこを間違えたのか,真摯に見つめ直したい.

・航空宇宙工学科主任:村松旦典 教授
様々なトラブルにより記録挑戦の延期が続き,今回の記録挑戦は飛行できない条件では無かっただけに記録が達成できなかったことは非常に残念です.まずは足掛け4年,このプロジェクトを支えてきた安部建一専任講師とプロジェクトに携わった学生たちの労を讃えたいと思います.プロジェクト実施にあたっては,本学関係者だけでなく,OB・OG,校友会や企業各社,そして茨城県美浦村安中漁業(協)の方々など多くの皆様から多大なるご協力をいただきました.学科を代表して感謝の意を述べさせていただきます.


今回のプロジェクト実施にあたり,以下の方々からご支援・ご協力をいただきました.
深く感謝申し上げます.(敬称略)

 玄蕃秀一
 佐藤敏郎
 野々村博光
 株式会社 ウェザーニューズ
 常総開発工業 株式会社
 大昭建設 株式会社
 Piccolo Airworks
 美浦産業
 株式会社 ラクスマリーナ
 公益財団法人 日本ハング・パラグライディング連盟
 波崎サーフライフセービングクラブ
 美浦村役場
 麻生漁業協同組合
 安中漁業協同組合
 霞ヶ浦漁業協同組合
 馬掛ラジコンクラブ
 日本大学航空研究会
 日本大学工科校友会 茨城県支部
 日本大学 国際救助隊(N.Resucue)
 日本大学理工学部航空部同窓会


また,挑戦当日に周辺施設オーナー並びに利用者の方々に多大なご迷惑をお掛けしましたことを,この場を借りて深くお詫び申し上げます.